INTERVIEW第1回統計検定文部科学大臣賞受賞者インタビュー(専門統計調査士)

益子 崇之 さん
「業務を一段高いレベルで遂行したい」から専門統計調査士へ-業務を見る目や自らの世界が広がる!
統計に対する印象は?
高校までに習った統計について、どのような印象をもっていましたか。
私が高校のときというと約30年前なので「データの活用」といった単元はなかったのですが、「確率」はありました。文系だった私ですが、「確率」は、現実世界で将来を予測したり、宝くじの期待値のように日常で損得を勘定するような場面で使えたりしそうで、数学の中では比較的面白そうだなという印象をもった記憶があります。
大学で学んだ統計についてはどうですか。
文学部でドイツ文学を専攻したのですが、統計の授業などはまったくなく、数字を扱うこともほぼありませんでした。
当時は統計がどのように役立つものだと考えていましたか。
高校のときの「確率」で受けた印象以外には、統計について考えること自体、ありませんでした。
統計検定に挑戦したきっかけは?
「統計」に関心をもった時期や背景を教えてください。
30代前半のとき、今の会社の子会社であるシンクタンクに出向して市場調査をすることになりました。アンケート調査など、アイデアを出しながら、面白いなと思いながらやっていたのですが、何年もすると分析がワンパターンだなと感じるようになってきました。そこで、他の人の分析レポートや本を少し見てみたところ、因子分析などの多変量解析を目にして、何か格好いいな、こういうことができたら自分の幅が広がるのではないかな、と憧れのような気持ちを抱いたことがありました。
数ある資格の中で、なぜ「統計検定」を選んだのですか。
その後、他の部署に移ったのですが、勉強しないままだと心残りになりそうだったため、6、7年前にようやく一念発起しました。その際、会社の奨励資格の中に「統計検定」があるのを見つけたことも勉強を始めるきっかけになったように思います。
なぜ、統計検定だったのかというと、「統計」だから「統計検定」と、単純ですが、それが一番の理由だったですね。
受験に向けて
どのように勉強(準備)しましたか。また、留意したことはありますか。
専門統計調査士の前には、3級、2級、準1級と受けていたのですが、その後はプログラミングや簿記などの他分野の勉強をしていたため、統計から少し離れていました。しばらくしてから、また統計の勉強に復帰するわけですが、そのときは、データサイエンス基礎をリハビリ的に受け、そして、統計調査士と専門統計調査士を受けました。
勉強の仕方としては、基本的に本ですね。挫折しないために、自分のレベルに合っていそうな評判のよい本を探しては、それらを順序よくこなしていくように心がけました。むずかし過ぎると感じたときは、早めに別の本に切り替えることも必要だと考えています。統計学に限らず、勉強するときは急に高いところに飛びつこうとせず、一歩一歩階段を上っていくように徐々に高みを目指すのがよいと思います。
留意したことは、仕事しながらでしたので、無理はせず、しかし、毎日欠かさずちょっとでもやる、というように習慣化したことです。
おすすめの勉強法を教えてください。
準1級に受かった後、プログラミング(Python)の勉強もするようになったのですが、プログラミングは統計の理解を深めるのに大いに有効だと思います。たとえば、2級で登場する、標本のサンプルサイズが大きくなると標本平均の分布は正規分布に近づくという中心極限定理などは、プログラミングによるシミュレーションを介すと、あぁこういうことかとイメージが湧きやすいように思います。ですので、プログラミングと組み合わせて理論の勉強をするのがおすすめです。プログラミングはハードルが高いと感じる方はExcelでもよいと思います。私が2級を受けたときには、まだデータサイエンス基礎はなかったのですが、データサイエンス基礎ではExcelを多く使用します。もしも3級のあとにデータサイエンス基礎を受けていたら2級の内容がもっとスムーズに頭に入ったのだろうな、と感じました。
勉強中に印象に残っているエピソードはありますか。
高校時代は数学嫌いでしたが、大人になって、自分のペースで学び直してみると、数学という学問自体はそれほど嫌いじゃないのかもしれない、と思うようになりました。では、なぜ嫌いという意識になったのかというと、学校の宿題やテストに追われる生活や、ちょっとした計算間違いで×になった記憶などが原因かもしれません。あらためて一人で数学に取り組んでみると、思ったより抵抗感を覚えない、というのは新たな発見でした。
合格を通して得たもの
合格により、何か変わったことや得られた気づきはありますか?
他の人が行ったアンケート調査や統計調査の結果を見るとき、調査票の内容は具体的にどうなっているのか、サンプルはどうとったのかなど、注意深く見る習慣がついたように思います。
現在の業務にどのように活かせていると感じますか?
現在は市場調査とは別の業務に従事しているため、専門統計調査士の内容が直接的に活かされるケースは少ないのですが、勤めている会社が金融会社であり、業務上で貸し倒れに関する分析や予測をすることがあります。予測モデルを作成・メンテナンスするときなどは、一連の統計検定の勉強で得た知識が活かされているように感じます。
文部科学大臣賞受賞の感想をお聞かせください。
まず、家族が祝ってくれたのがうれしかったです。立派な賞状を見せることができて、父親としての威厳を保てたかなと思います(笑)。また、表彰式では、日本を代表する統計学者の方々と同席でき、とても光栄でした。6、7年前に統計の勉強を始めた頃には、こんなことが起こるなんて想像もできなかったのですが、地道にやっているといいこともあるんだなと思いました。
今後、統計やデータ活用に関して、どのようなことに取り組んでいきたいですか。
もちろん勉強は続け、いつか1級にも挑戦したいと考えています。また、最近になって経済学の勉強も始めたんですが、そうした関連知識も充実させることで、業務での予測の精度や説明力・説得力の向上につなげたいと思っています。
統計検定を目指す人へ
最後に、「統計検定」を目指す人へ、アドバイスやメッセージをお願いします。
社会人の中には数学に苦手意識のある方々も多いと思うのですが、実際に勉強を始めてみたら、思ったより抵抗なく取り組める、という可能性は十分あります。いずれにせよ、自分のペースで地道に取り組むことが大切だと思います。
また、統計学は、経済・マーケティング・心理学・生産管理・医学など、さまざまな分野で使われているので、勉強を通じていろいろな世界を垣間見て視野を広げることができます。特に、中高生のみなさんには、将来の進路を考える上でも役立つかもしれません。
最近では生成AIの発展が著しく、利便性や生産性の向上が期待できる反面、自分のやっている仕事は今後どうなるのか、子どもたちの世代ではどんな知識やスキルが重要になるのかなど、将来が不透明で心配になることもあります。そうした状況下であっても、統計学や数学はAIの基盤を支える学問ですから、これらを勉強して無駄になることは決してないと思います。「統計検定」への挑戦を通じて自己研鑽を積むことは、きっと自分の将来を切り拓くための大きな助けになるものと考えています。
「なくてはならない」へ

分析能力の向上

キャリアの強化

成果の最大化
