受験のきっかけは,行政に携わる者として「政策を科学したい」と強く感じるようになっていたことです。政策の企画立案や評価のため,客観的なデータ分析のニーズは高まるばかりであり,その力試しのため,RSS/JSS試験にチャレンジしました。
RSS/JSS試験は他の試験区分と違い,英国での実績が重ねられているため,過去問は豊富に入手できます。受験の準備過程で,人文社会,理工,医学薬学,そして公共政策などあらゆる分野で通用する統計学の考え方を勉強させていただきました。今後はGraduate Diploma も行われるとのこと,仕事をしながらの受験はなかなか大変ですが,引き続きチャレンジを続けたいと考えています。
今や優れた分析ソフトウェアや情報システムが次々と登場し,リアルタイムに膨張するデータをビジネスに活かそうとする試みがにわかに活発になっています。こうしたデータ分析の機運の高まりは歓迎すべきことですが,逆にフィクションの数字に踊らされる危険性も高まっているように感じます。コンピュータの分析に目を奪われ,扱うデータソースの代表性や,コンピュータ計算の背後にある統計理論を見落としがちになるためです。
RSS/JSS試験では,今やパソコンで行うようなグラフ作成や回帰分析なども,紙と鉛筆と電卓で行う必要があり,標本抽出や分析のアイデア,結果の解釈についての論述も課されます。ビッグデータ時代と言われる今こそ,コンピュータを正しく使い,結果を正しく理解するため,こうした基礎トレーニングは不可欠だと思います。今後統計検定が実績を積んで,真のstatisticianを証明する検定として,定着することを期待しています。