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大塚製薬株式会社研究所での取り組み

統計学的思考を身に付けるための統計検定2級及び3級の活用

当社研究所では、試験デザインや統計解析等を計画・実施するにあたり、統計学的思考を身に付けるための統計教育に2010年から取り組んできました。その内容は、初級コースは、要約統計量・分布・検定・信頼区間・例数設計・統計的誤用など、基本的なものが中心でした。中級コースは、医薬の文献に頻出する手法を取り上げて説明を行っていました。初級コースでは、受講者の理解の程を確かめるための試験を行うことがありましたが、毎年試験問題を考えることは大変な作業でした。そのようなとき、統計検定の問題を見る機会があり、統計検定2級及び3級の内容が、まさに初級コースの内容と一致していたので驚きました。現在の教育は、「統計検定を活用してみるか」と思い、その教育方法を検討し、実施しています。当社の実施内容について紹介します。

■研修について
目的:統計学的思考を身に付けること
目標:統計検定2級相当の統計学的思考力を備えること
参加者:研究所や工場の社員から希望者を募り、約200名が参加
期間:2017年3月~現在
教材:統計検定公式テキスト、統計検定過去問題集、社内独自に作成した学習資料
研修内容:当社研究所の生物統計のホームページを研修に利用しています。週に1度、統計検定2級・3級の過去問を1題ずつ生物統計のホームページに掲げ、参加者にメールでホームページの更新案内をし、各自で課題に取り組んで頂く形式です。掲げた問題については、解答・解説・関連学習事項について資料を作成して参加者にフィードバックしています。関連学習資料については、統計検定2級公式テキストの目次を学習すべき項目と考え、その内容について説明しています。

■学習状況
 現在までに、2015年11月の統計検定2級・3級の過去問を紹介しました。統計検定2級公式テキストの目次を学習すべき項目とすると統計学の基本事項をおよそ一通り学習したことになります。また、今回の研修では質問の対応もしていましたので、以下にその質問例を抜粋して記載しました。
・出題した問題の統計学の中における位置づけ、業務との関係について
・箱ひげ図のように、第1四分位数などで図示することの意義について
・2級の問 2(3) について質問があるのですが、P(Z≧1.97)=0.0244とはどうやって導くのでしょうか?
このような参加者からの質問に対する回答も、生物統計のホームページに掲載しています。

■統計検定2級を目標とした理由
 1998 年に発表された日米欧医薬品規制調和会議(ICH)のガイドラインに、「薬事法の適用となる臨床試験には適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家が計画段階から関与することが必須」と記載されています。このガイドラインに対応して、日本計量生物学会が、「実務試験統計家」の認定要件として「大学院修士クラス以上の統計の専門教育を受けるか、統計検定 2 級相当以上の能力を有すること」と発表しています。よって、生物系研究の実務者にとっても、文献調査における解析や試験内容の科学的意味を理解すること、更に、研究で証明したい事項を検討するために、統計検定2級に相当するスキルが大いに役立つと考え、研修の目標に設定しました。

■研修の成果として
 今までに社内の統計研修を受けてきた参加者や、更に意欲的に学習したい参加者は、統計検定の問題をクイズ感覚で楽しんでいたように感じます。また、社内の研究グループの会議などで、統計学的な用語や概念が共通言語として使用されている状況が増えたように思います。更に、参加者からの統計相談が増えたことや、日常業務で統計学を必要としない参加者に対しても統計学に触れる機会を作り出せたと思います。

■今後の展望
 統計学的な手法・知識・思考は、研究のみならず幅広い業務に役立つと考えています。今後も社内での統計教育の取組みを継続し、様々な業務に活かされることを期待しています。

統計検定を活用する皆様へのメッセージ

 統計解析の実施に際して常に統計専門家に相談している方は良いのですが、統計学の書籍や、文献調査などで得た類似事例を自らのデータに当てはめて、統計解析を行う方も非常に多いと思います。その際に誤った統計解析を行っている方が多いと感じています。日頃から統計学の基礎理論を学習し、正しい統計解析を行うことが大切です。そのために統計検定が大いに役立つと思います。