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合格者の声

1級「統計応用」

医薬統計学で実験・観察研究の方法論を学ぶ
塘 由惟さん(東京大学大学院生物統計情報学コース修士1年)

 生物統計学を専攻している大学院生です。以前は農学部に所属し、栄養学系の分野で実験系の基礎研究を行っていました。今回の統計検定では、応用分野のうち医薬生物学分野を選択し合格しました。そこで、私にとって医薬統計学の学習がどのような知識・考え方を身につけるための手助けとなったか述べてみたいと思います。
 初めに、医薬生物学の領域で問題となる統計的課題について述べます。一般に、医学・薬学・生物学領域の研究の特徴として、制御可能な要因が少ないことが挙げられます。例えば実験動物を扱う場合、全く同じ個体を用意することはできません。似た遺伝的特性の個体をなるべく厳密に管理して飼育した場合でも、実験結果には個体間で大きな誤差が生じることがあります。臨床試験や疫学のようにヒトを対象として研究を行う場合も同様で、測定可能なものから不可能なものまで、多くの要因に由来する誤差を扱う必要があります。このような状況では、意味のある差を見出すために必要なサンプル数が大きくなることで研究の実行が困難になったり、交絡に十分に対処できていない場合に誤った結論が導かれてしまう可能性があります。
 医薬統計学は、医学・薬学の領域で生じるこのような課題に対して統計学的な立場から解決する方法論を提供する分野であり、主に臨床試験・疫学における研究デザインや解析手法を扱います。統計検定1級の医薬生物学分野についても、臨床試験や疫学を題材とした出題が多くを占めています。過去問では、多様な設定におけるサンプル数設計、混合効果モデルによるクラスタを考慮した解析、層別解析による交絡への対処など、様々な方法論とその数理が問われており、勉強の遣り応えがありました。
 今回の学習を通して私は、「実験・観察研究において、より効率的で妥当な評価を行うためにどのような工夫を行い得るか」ということについて、知識や考え方を多少なりとも身につけることができたと思います。このような、医薬統計学の学習により得られる知識は、医学・薬学研究者のみならず、基礎生物学者、さらにはマーケター・リサーチャーなど、実際にデータの収集と解析・解釈を行うような方であれば誰でも、効率的に妥当性の高い結論を導くための一助になり得ると確信しています。私自身も、今回の合格を第一歩としてより本格的な医学・生物統計学の研究と実践の道へ進んでいきたいです。

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